たけくまメモにこんなエントリがアップされてました。
漫画家須賀原氏とのブログでの論戦の結果報告エントリなのですが、文中に出てくるたけくま氏のデジタルコンテンツの配信事業についての意見が非常に面白いです。というかインターネットを分かってる人だなあと。
以下たけくまさんのブログから引用。
須賀原洋行氏のご批判について(1)
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-09de.html
いい機会ですので、ここで出版のダウンロード配信についての私見を書きたいと思います。自分は、インターネットは「宣伝媒体」としては超有効だが、「データをダウンロード販売して直接お金に換えること」においてははなはだ不適当なメディア・インフラだと考えております。いくつかの例外を除いて、デジタルデータのダウンロード配信のビジネス化は、ことごとくが失敗の歴史であり、その最大の理由は、「人は、“かたちのあるもの(本やグッズなど)”にはお金を払うが、“かたちのないもの(デジタルデータ)”には払いたくないもの」だと思うからです。
須賀原氏が美談のように書かれている「ネット配信はほとんどが赤字であり、ネットだけでは全然儲けが出ないのだ。それでも、近未来のマンガ界のためにネットに先行投資してきたのだ。」という苦しい実態は、当然のことだろうと考えます。従来の出版ビジネスの延長で「ネット配信で儲けよう」と考える時点で、おそらく無理があったのです。従来の価値観でネットをとらえる限り、利益を上げることは困難でしょう。
ダウンロード配信の課金ビジネスで成功したといえるものは、今のところ「音楽(iTunes、着メロ)」「エロ動画」、「ケータイ配信の(エロ)マ ンガ」、一部のネットサービス(ツール系PCソフトウェア販売、オンラインゲームなど)くらいではないでしょうか。それ以外、従来紙の本やDVDなどで販 売されていたコンテンツ(マンガや小説、ドラマ・映画など)のダウンロード課金システムは、ほとんどビジネスになっていないはずです(私が知らないだけか もしれません。他に成功例があったら教えてください)。
自分は、佐藤秀峰氏の自作マンガのネット配信を、興味を持って見ておりますが、ビジネスとしては、残念ながら成功する可能性は低いのではないかと考 えています。理由は上に書いた通りで、普通の読者は「ネット・コンテンツはタダ」という心理が強いからです。自分の考えでは、ネット上ではあくまで無料で 作品を読ませ、紙の本を売るための宣伝に徹したほうがいいように思います。
この一連の文章を読んでこの前、読んだ本を思い出しました。
新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に | |
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アーカムしゃちょう日記「新世紀メディア論 小林弘人著を読んだ。」
http://arcam.typepad.jp/arcamstaff/2009/08/post-cc1c.html
僕はこの本を読んで以下のように解釈したんですね。
「雑誌を作る人はコンテンツを編集できる。しかも非常に優秀。」
ただ、作ったものを売るのは、既存の流通モデル(出版社―取次―書店)に乗っけるしか 考えてなかった。
時代の流れでWEBにも流そうとするけど、収益モデルが「広告と読者課金型」しか思いつかない。
コンテンツを作って、儲けるということに、とらわれすぎて本当は、ECもアフィリエイトも、マーケティングデータもごろごろ換金できる要素はあるのに。。。
僕が理解できる範囲になりますが、たけくまさんのこの記事と、小林さんの本で共通するのは、
インターネットの出現で今までの出版の既成概念や、流通の仕組みに全くとらわれてはいけないということだと思うのです。
なんか子供の感想文みたいなのですが、
「モノを作る→流通させる→収益を得る」という当たり前の構造が通用しなくなる。
編集や作品創造の価値をそのまま、商品として流通させること自体が、ネットのもたらすフリーコピー時代(コンテンツ無料の時代)を控えて通用しなくなってきてる。
出版業界もこの何百年も続いてきた構造自体を根本から否定するぐらいの変化が必要なんだと思うんですね。
。。。
たけくまさんは、マンガ産業の衰退は本質的にはマンガ喫茶や新古書店の隆盛でなく、長期連載にみられる質の低下であるとおっしゃってます。
以下、また引用。
たけくまメモ マンガ界崩壊を止めるためには(5)
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_fbbd.html
俺の持論を書きますが、ゲームやケータイはともかく、売り上げ減少の責任をブックオフやマンガ喫茶に押しつけるのはバカげた議論で す。ブックオフやマンガ喫茶の台頭を許したものは、80年代から顕著になったマンガの長期連載化です。いつまで経っても主人公が試合していて、ほとんどそ れだけで40巻も50巻も単行本が出続けるという現状は、狂っています。これではマンガが売れなくなるのは当たり前です。俺みたいなオタクはともかくとし て、普通の人は同じ題名のマンガで本棚を全部埋めたりしません。出版界は、目先の利益を追求してヒットマンガの際限なき連載引き延ばしを図り、結果として自分の首を絞めたとしか思えません。
マンガはブックオフで購入して読んだらまた売る、あるいは会社や学校からの帰宅途中でマンガ喫茶に寄って数十巻のマンガを少しずつ読んでいく。こういったライフスタイルが定着したことは、そのままマンガの売り上げ減少に繋がっていることはその通りです。しかしマンガ読者の減少を示すものではありません。単純に、読者の生活の知恵として、
マンガは、買ってまで読むものではなくなっている
。。。
まさにその通りだと思います。あの巻でおわっときゃ名作だったのに。。と思うような作品はいっぱいありますし、30巻も40巻も作品を集め続ける気力も読者にはなくなってきてるのではないかと思います。だから新刊でなく、中古で。さらにはマンガ喫茶やレンタルですまそうとする。
マンガ文化の裾野は広がってるけど、マンガの長期連載が読者の購買ニーズと合わなくなってきちゃってると。
ただ、一点僕が意見を言わせていただくと、中古マンガのWEBでの流通量というのは半端ではなく、やはり、中古品からの利益還元というのは必要だと思うんですね。
雑誌や情報集約系の編集本の為でなく(彼らはほかに稼ぐ手だてがある!)、
小説やマンガなど「作家」の為には。
中古本という2次流通を担うものとして流通下流からの自発的な利益還元は成立させたいと思います。
正解かどうかともかく、それが僕の中での「既成概念にとらわれない」の一つです。
まだ色々いいたいですけど、まとめきれないのでこれだけにしておきます。
たけくまさんとも一度じっくりお会いしてお話してみたいです。。
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